国内はもとより、海外からも多くの観光客が押し寄せる立山黒部アルペンルート。豪雪地帯であるため、立ち入ることができるのはまだ雪の残る4月中旬から紅葉真っ盛りの秋までの約7ヶ月。
出典:フォートラベル
さまざまな乗り物を乗り継ぎながら、美しい山々の景色を飽きることなく堪能できます。その短いシーズン中に訪れる旅人は、年間100万人近くにものぼります。
中でも秋はオススメ!ルート上で一番標高の高い室堂では、9月中旬から紅葉が始まります。立山黒部アルペンルートで、一足早く紅葉を楽しんでみませんか?
黒部ダムの動画はこちら
立山黒部アルペンルートについて
立山黒部アルペンルートの歴史
もともとは、富山県と長野県を全線自動車道路として結ぶことを目標に計画が進められていました。
1958年までに立山ケーブルカーや立山高原バス道路が完成、大町トンネル(現関電トンネル)も開通しました。そして、1966年には立山トンネルの掘削工事が始まりました。
出典:ameblo.jp
しかし集中豪雨により資材運搬ルートの崩壊や、毎分63トンにも及ぶ湧水により工事は苦難の連続。工事中に命を落としてしまった作業員もおられます。
また自然保護団体による反対もあったため、全線自動車道路の計画から大観峰から黒部平まではロープウェイ、黒部平から黒部湖まではケーブルカーで移動する形に計画を一部変更することになります。
さまざまな困難を乗り越え、1971年6月に立山黒部アルペンルートの全線が開通しました。1952年に富山県が総合開発計画の中で基本計画を策定したことから始まってから、約20年の歳月を要したことになります。
黒部ダムそばの新展望広場特設会場では、ダム建設時の歴史を資料やパネルで紹介しています。また、映画「黒部の太陽」で使用したトンネルセットのレプリカも。
立山黒部アルペンルートのきっぷについて
立山黒部アルペンルートは一般車両が通行禁止のため、富山県側の立山駅または長野県側の扇沢からのきっぷを購入しなければいけません。
きっぷの種類は立山駅⇔扇沢の通り抜けきっぷ、立山駅⇔黒部湖や立山駅⇔大観峰など途中で折り返す場合の往復きっぷの2パターン。
出典:みんカラ – カービュー
立山黒部アルペンルートの醍醐味としては通り抜けるのが一番ですが、日程の都合などで難しい場合は途中で折り返して見たいところだけをしっかりと楽しむ事も可能。
もしマイカーやレンタカーを利用して通り抜ける場合は車を回送してもらう必要があり、普通自動車で1台あたり¥30000ほどかかります。
出典:Twitter
立山黒部アルペンルートへの旅は、富山県・長野県のどちら側から入るか、通り抜けるか折り返すか、通り抜ける場合は日帰りか宿泊するか、出発地点までマイカーやレンタカーで行くか公共交通機関で行くかを決めることから始まります。
立山黒部アルペンルートの乗り物
総延長37.2kmに及ぶ立山黒部アルペンルートを通り抜ける際には、6つの乗り物を乗り継いでいきます。
出典:立山黒部アルペンルート
ただの移動手段としてではなく、乗り継ぎの駅で散策したり景色を眺めたりと立山黒部アルペンルートらしい楽しみ方で過ごしましょう。
富山県側から長野県側へ通り抜ける場合、以下の順で乗り物を利用します。
立山ケーブルカー(立山駅⇔美女平)
出典:天馬行空
標高差約500m、平均勾配24度。1.3kmで所要時間は7分。
かつては黒部ダム建設用の資材運搬に利用されていたため、荷台が付いているという珍しいもの。
立山高原バス(美女平⇔弥陀ヶ原⇔室堂)
出典:立山ガール日記
標高差約1500m、23kmを50分かけて移動。
途中の弥陀ヶ原で降車し、散策も可能。車内にあるモニターでは見どころ解説を映像で確認できる。
立山トンネルトロリーバス(室堂⇔大観峰)
出典:フォートラベル
立山の主峰である標高3003mの雄山直下を貫通する立山トンネル内を走るバス。
出典:鉄道コム
バスの形をしているが、電気で走るため法律上は電車に分類されるそう。3.7kmで所要時間10分。
立山ロープウェイ(大観峰⇔黒部平)
出典:ポン助の雑談ブログ
途中に支柱がないワンスパンロープウェイ。ワンスパン方式のロープウェイとしては日本最長で、長さ1700mで所要時間は7分。
出典:フォートラベル
眼下に広がるタンボ平は、立山黒部アルペンルートでも特に美しい紅葉の名所。
黒部ケーブルカー(黒部平⇔黒部湖)
最大勾配31度を、日本唯一の全線地下式ケーブルカーで進む。
出典:山と愛蘭土
開業当時からの客車が現役として活躍。0.8kmで所要時間は5分。
徒歩(※乗り物ではなく、ダム堰堤を歩いて移動)
乗り物と乗り物の間を徒歩で移動する区間。緩やかに弧を描く美しいアーチ状のダム堰堤を、約15分かけて歩いて行く。
ダムの放水や、山々の景色が存分に楽しめる場所。レストハウスでは、ダム湖を見ながら名物のダムカレーが食べられる。
関電トンネル電気バス(黒部ダム⇔扇沢)
CO2を排出しない環境に優しいバスで、関電トンネル内を走ります。2018年11月30日まではトロリーバスが運行中。
1往復ごとに、約10分の超急速充電を行い運転。6。1kmで所要時間は16分。トンネル内が県境になっていて、富山県から長野県に入ります。
※各乗り物の所要時間には、乗り継ぎのための時間を含んでおりません。乗車前に時刻表で確認してください。
電話番号:076-432-2819
立山黒部アルペンルートの楽しみ方
季節ごとに変わる立山黒部アルペンルートの魅力
ほぼ全区間が中部山岳国立公園内にあるため、ルート上には大自然が造り出す絶景スポットが点在しています。
出典:フォートラベル
立山黒部アルペンルートの営業期間は例年4月中旬~11月30日までで、季節によって異なる景観が楽しめます。
中でも、全線開通直後から6月中旬にかけての「雪の大谷」は人気が高く混み合います。標高2450mの室堂平にある大谷と呼ばれる吹き溜まりに積もった雪が、高さ10~15mほどにもなります。
ここを通る道路を除雪してできた雪の壁を間近に見ながら歩くウォークイベントには、毎年多くの観光客が訪れています。
そして、立山黒部アルペンルートは紅葉の美しさも際立っています。標高475mの立山駅から標高2450mの室堂まで最大の高低差が1975mもあるため、見頃の時期も場所により異なります。
室堂では9月中旬から、大観望や弥陀ヶ原は9月下旬から10月上旬、黒部ダムや扇沢周辺では10月中旬、美女平や称名滝では10月下旬から11月上旬頃。
そのほかにも短い夏を彩る木々の緑や、ルート上にあるホテルに宿泊して夜になったら満天の星を眺めるのもオススメです。
立山黒部シーズンウォークに参加してみる
自分の好きな風景だけを見に行くのもいいのですが、立山黒部シーズンウォークに参加するのも1つの手。
出典:滝と名水と登山 from 富山 – Seesaaブログ
GPS連動のエリアマップでコースや見どころを確認しながら、その季節で一番いい景色を眺めに行きましょう。2019年9月以降の開催は以下の通り。
★弥陀ヶ原ウォーク 9月16日~10月13日
★称名滝ウォーク 10月14日~10月27日
★美女平ウォーク 10月28日~11月3日
出典:フォートラベル
参加は無料ですが、現地までの運賃は別途かかります。参加者には、オリジナルの缶バッチが記念に貰えます。
登山道・遊歩道を歩くので、スニーカーやトレッキングシューズを忘れずに。
立山黒部アルペンルートのグルメを味わう
旅先での楽しみと言えば、やはりグルメは外せませんよね。立山黒部アルペンルートの駅にある売店や、近隣のホテルなどではその土地ならではのグルメが味わえます。
出典:立山黒部アルペンルート
グルメを楽しみたい方にオススメしたいのが「雲上グルメクーポン」。全国のコンビニエンスストアで引換券が購入でき、チケット6枚で¥1200。
利用する際に、立山駅構内売店、室堂観光案内所、黒部平駅構内売店のいずれかで引き換えが必要となります。
出典:楽天ブログ – 楽天市場
全34品の中から、各施設の人気メニューを選ぶことができます。人気が高いのは、室堂ターミナル2階にあるホテル立山・ティーラウンジりんどうの「黒部ダムシフォン」。
黒部ダムをイメージしたビッグサイズのシフォンケーキなら、チケット4枚。現地で単品を頼むと¥900なので、ちょっぴりお得です。
名水百選の立山玉殿の湧水で淹れたコーヒーと一緒にぜひどうぞ!
立山黒部アルペンルートのここに注目!
立山黒部アルペンルートには、その場所ならではの風景があります。ルート上に点在する見どころの中から、特に見ておきたいスポットをご紹介します。
黒部ダム
出典:フォートラベル
1956年の着工から7年かけて完成し、総工費は当時のお金で513億円と言われます。建設には1000万人もの人が携わり、厳しい自然条件の中最新の技術を駆使して行われました。
アーチ式の美しいダムで、堰堤の高さは186mと日本一の高さを誇ります。黒部ダムと言えば放水が有名ですが、毎年6月26日~10月15日まで期間中毎日行われています。(※天候により中止の場合もあります)
出典:フォートラベル
毎秒あたり10トン以上と、その規模の大きさと迫力に圧倒されます。運がよければ、放水と虹のコラボも楽しめるかも。
この放水の様子が眺められるスポットがいくつかあり、黒部ダム駅から220段の階段を上がったダム展望台、ダム堰堤とほぼ同じ高さにある放水観覧ステージ、新展望広場レインボーテラス、全長492mの堰堤などです。
今密かに人気のダムカードですが、黒部ダムでも配布をしています。配布場所は黒部ダムレストハウス1階売店と扇沢売店だけなので、ぜひ記念にいただいていきましょう。
弥陀ヶ原
出典:フォートラベル
標高1600~2000mにあるなだらかな溶岩台地で、ラムサール条約に登録された湿原が広がっています。
出典:Tバッグ
美女平から室堂までを走る立山高原バスの間にあるので、ぜひ弥陀ヶ原バス停で途中下車をして散策を楽しみましょう。湿原の間に敷かれた木道を進んでいくと、あちこちに小さな池が見えてきます。
出典:フォートラベル
ガキ田と呼ばれる大小1000個もの池塘で、中にはハート型の池もあるそうなので探してみてください。池塘は長い年月をかけて発生や成長・消滅を繰り返し、弥陀ヶ原の風景を彩っています。
夏には高山植物が、秋になるとミネカエデやダケカンバが美しく黄葉します。また天候に恵まれれば、青空や雲・山々が鏡のような池に映り幻想的な世界を造ります。
出典:立山ガール日記
散策を楽しんだ後は、バス停から徒歩2分の場所にある弥陀ヶ原ホテルのロビーラウンジでコーヒータイム。クレームブリュレと雲海コーヒーで一息つきましょう。
散策をする前に、次に乗るバスの時間を確認・予約しておくのを忘れずに!
室堂
出典:LINE BLOG
室堂ターミナルは日本で最も高い場所にある駅で、標高は2450mに位置しています。ここも紅葉の名所として有名で、9月中旬頃からナナカマドやチングルマが色づき始めます。
室堂ターミナルに隣接している立山自然保護センターでは、立山の希少な動植物について映像やパネルなどを使い詳しく紹介しています。入場は無料なので、ぜひこちらも立ち寄ってみてください。
出典:フォートラベル
また、室堂ターミナルのすぐそばには「立山玉殿の湧水」があります。立山の主峰・雄山直下から湧出していて、その量は1日約2万トン!
立山に降った雨や雪が長い年月を経て濾過され、2~5度の冷たい水が絶え間なく湧き出しています。
柄杓が用意されているのでその場で飲むこともできますが、水筒や空のペットボトル持参をオススメします。
出典:山と温泉のきろく
もし時間があれば、室堂ターミナルから徒歩15分くらいの場所にあるみくりが池温泉へも足を延ばしてみてください。
ここは日本一高い場所にある天然温泉で、白濁した硫黄泉が100%源泉かけ流し。日帰りでの入浴が可能ですよ!
称名滝
立山駅から、車やバスで行くことが出来ます。
滝から流れ出た水が称名川になり、その川に沿って進んでいきます。時折川を眺めてみると、あまりの水の美しさに疲れも吹き飛びます。
出典:フォートラベル
ただし、駐車場から徒歩約30分となかなかの時間をかけて行く必要があります。道路は舗装されているので歩きやすいですが、緩やかに坂が続きます。
出典:どこでも参上
頑張って歩いてきた後に待っているのが、豪快に水しぶきをあげて流れ落ちる称名滝。滝のそばまで行くと、その迫力に圧倒されます。まさに名瀑と呼ぶにふさわしい滝。
350mの高さから4段になって流れ落ち、日本一の落差を誇ります。国の名勝および天然記念物に指定され、日本の滝100選にも選ばれています。
雪解けの時期や大雨の後には隣にハンノキ滝が現れて、珍しいV字の滝になります。秋には滝周辺の渓谷が赤や黄色に染まり、白い滝筋とのコントラストが絶妙です。
「日本の屋根」と言われる日本アルプスの1つが北アルプス。その北アルプスを貫く山岳観光ルートが、立山黒部アルペンルート。
いくつもの乗り物を乗り継ぎ、歩く。これでもかというほど、山の厳しさと美しさを教えてくれる場所です。少し早い秋を探しに、ぜひ出掛けてみませんか?
※立山高原バスは、10月下旬頃から降雪や凍結などにより遅延・運休が発生しやすい時期です。事前に運行状況を必ずご確認ください。
※各乗り物の時刻や施設の営業時間・料金などは、お出かけ前にHPで必ずご確認ください。