おせち料理を作らずに百貨店や通信販売で購入することが増え、りっぱなお重が手軽に食べられるように。中華おせちやイタリアンおせちなど、老若男女が楽しめるオードブル感覚のものが増えていますね。
全国で流通している取り寄せのおせちには、ひょっとしたら九州ならではのものが入っていないのかも知れません。そこで、今回は九州各県のお正月料理に注目。これってこの県だけなの?というものや、ぜんぜん知らなかった!という料理があるかもしれません。どうぞご覧ください!
がめ煮(福岡県・大分県・佐賀県)
北部九州一帯で作られる「がめ煮」は、レンコン・タケノコ・里芋・人参・コンニャク・干しシイタケ・骨付鶏肉などを大量に煮込んで作る料理。毎日火を通して三が日で食べきります。多くの材料を一口大に切り、干し椎茸を戻す時間なども入れると仕込みに半日ほどかかる、ハレの日の料理。
筑前煮ととがめ煮はどう違うの?
筑前煮ととがめ煮はどう違うの?というのはよく聞く質問ですよね。
一説には、給食で郷土料理を広めようという試みで福岡県北部と西部の旧国名だった「筑前」をつけて、筑前煮と呼ぶようになったのだとか。
その主張では、両方は同一のもの。
また別の説では、骨付の肉を使うのが「がめ煮」、骨がない肉を使うのが「筑前煮」だから両方は別のもの。他にも郷土愛が強い元筑前藩士が、他国に行った際に自慢の郷土料理を筑前煮と紹介したから筑前煮になった、などの説があり、実は違いははっきりしていません。
いずれにしても、根菜類がたくさん入ったヘルシーな料理。お正月の豪華なこってりした料理に疲れたときなど、一食をがめ煮にすると、ほっとした気持ちになるかもしれません。
博多雑煮 (福岡県)
出典:久右衛門あごだし
福岡県の雑煮には、「かつお菜」が入っています。かつお菜は、福岡県以外ではあまり見かけない野菜。魚のカツオに似た味がすることでカツオ名とつけられたとか。この野菜から良い出汁がとれるということ。博多のブリが入る雑煮にはかかせない野菜です。プリは、年末から塩ブリにし、数日寝かせたものを雑煮に使います。
出汁を焼きアゴ(飛魚)でとることと、ブリとカツオ菜を入れること以外は、海老や鶏肉を追加したり大根を底に敷いて餅が器にくっつかないようにしたりと、各家庭の好みで違います。かつお菜が手に入ったら、博多雑煮に挑戦してみてはいかがでしょうか。
さが雑煮(佐賀県)
牡蠣雑煮
出典:久右衛門あごだし
佐賀県の雑煮は、地域ごとに特徴がある雑煮が食べられています。太良町で作られるいるのは有名な有明産の牡蠣を使った「牡蠣雑煮」。カキをさっとゆでて取り出したところへ、ゴボウ・人参・白菜などを入れて煮込み、仕上げに焼いた丸餅とカキを入れます。味付けは白だしとミリンのみというシンプルなもの。カキがたっぷり入った豪華な雑煮です。
くじら雑煮
伊万里地方では、クジラの雑煮。皮と白い脂身の「カワクジラ」を使用します。塩蔵のカワクジラを水で洗って熱湯にくぐらせ、水にさらし、ゴボウ・かまぼこ・高菜・人参などと合わせます。カワクジラは噛めばかむほど旨味が出る食材のため、味が濃い雑煮に仕上がります。いずれも、他の地方ではあまり食べることがない雑煮ですから、チャンスがあったらぜひどうぞ。
具雑煮(長崎県)
ゴボウ・高野豆腐・コンニャク・里芋・白菜・椎茸・春菊・大根・鶏肉など、十数種類もの具材を使った「具雑煮」は、天草四郎が考案したという伝説もある栄養満点の雑煮です。お餅は煮た丸餅。カツオのダシ汁に醤油を入れます。
多くの具材が使われますが、海老や魚などは味が他の具材となじまないため基本的には使わず、彩りにカマボコを入れる程度。必須の食材は、ゴボウと鶏肉。これが入っていないと具雑煮ではない、とまで言われるほど。
また、具材の量が多いため、一人分の量も多く小さめの土鍋が一人分で供されます。島原地方では正月にかかせない一品です。
くじら料理(長崎県)
ひゃくひろ
長崎県「正月に大きなものを食べるとその年は健康に過ごせる」という言い伝えがあり、くじら肉を食べる風習があります。
その中でもヒャクヒロとスエヒロは、かかせません。ヒャクヒロは、クジラの小腸。手間ひまがかかる処理方法で作られるためスーパーなどで見かけることはめったに ないのが特徴としてあげられます。
すえひろ
出典:くじら日和本店
また、スエヒロは畝須(うねす)と呼ばれる部位から作られていて、見た目はクジラベーコンに似ていますが、縁を赤く着色して塩蔵する作り方がクジラベーコン。皮をつけたまま水煮にして作るのがスエヒロ。
スエヒロは「末広」を意味し、縁起が良いとされていて、長崎の正月料理にはかかせない一品。スエヒロはほぼ長崎にしかないものなので、チャンスがあったらぜひ食べてみてくださいね。
なまこ(長崎県)
出典: Instazu.com
お正月料理としてナマコを食べるのは、全国的にみても少なく、九州では長崎県だけ。大村湾で獲れるナマコが格別においしいから、というだけではありません。
ナマコが俵に似ているため「とーらご」(俵子と書き、本来は「たわらこ」と読む)と呼んでいて、正月に米俵を買うと縁起が良いとして豊作を願う。正月に食べるという風習になったと伝わっています。
朝鮮人参に匹敵するという栄養価の高いナマコですから、お正月休みに体力をつけるということにもつながりますね。お酒の飲みすぎにも効果あるとか。今度のお正月には、ナマコも食べてみてはいかがでしょうか。
からしれんこん(熊本県)
出典:熊本城観光施設
熊本県といえば「辛子蓮根」と言われるほど知名度が高い一品。もちろん、お正月料理にもかかせません。
レンコンの中に辛子味噌をぎゅうぎゅうに詰めて、水溶きの小麦粉にターメリックを混ぜてレンコンをくぐらせて、時間をかけて揚げます。そうすれば、きれいな黄色い辛子蓮根の完成です。ピリっと辛い辛子蓮根は、熊本ではおせち料理の中に入って彩を添えています。
このしろの姿寿司 (熊本県)
出典:グルトピ
正月にコレを食べないでどうする!という人もいるほど、お正月に食べられている「このしろの姿寿司」。八代海沿岸では季節ごとの祭りやお盆にも食べられています。
特に秋から冬にかけて脂がのっておいしくなるコノシロは、お寿司で光り物と呼ばれるコハダが出世したもの。15センチから30センチの大きさのコノシロを、頭をつけたまま背開きにして棒状の寿司飯の上に乗せて押し固めます。
コノシロは塩をしてから甘酢でしめてあり、コノシロの旨味が口いっぱいに広がります。寿司飯にはゴマや大葉も入れられていて、生臭みは感じません。醤油なしで食べられる味。骨も頭も酢じめでやわらかくなっているため残さず食べられますよ。コノシロを甘酢に浸す時間は2日間。手間ひまかけた味を食べてみたいもの。
馬刺し(熊本県)
出典:桜屋
お正月に「馬刺し」を食べる風習がある熊本県。年末には争奪戦になるほど、馬刺しが売れるそう。馬刺しをいつでも食べているイメージの熊本ですが、お正月には、より美味しい部位で普段より価格の高いものを購入するとのこと。
また、元気がでる馬肉を食べて今年一年無病息災を願うため、いつもは食べない人も購入しておせち料理とともに宴席に並べます。九州では、比較的入手しやすい馬刺しですから、今度のお正月に食べてみてはいかがでしょうか。
鶏肉の刺身(鹿児島県)
出典: 鹿児島物産ドットコム
地鶏の表面をあぶった「鶏肉の刺身」。新鮮な鶏肉のみでしか味わえない料理。使う鶏肉は薩摩地鶏。うま味の濃さが違う日本三大地鶏のひとつに数えられています。そのとろけるような食感と味わいは、絶品!どのお酒にも合うため宴席にはかかせない料理。
こが焼き(鹿児島県)
出典:cookpad
魚のすり身と卵を混ぜて作る伊達巻のようなものですが、巻かずに四角い状態で蒸し上げます。見た目はカステラのような仕上がり。きめが細かくなめらかで甘く、魚が入っていることを忘れるようなスイーツ感覚で食べられる一品。お正月料理の定番として、大人にも子供にも人気。各家庭で自慢の味が伝えられています。
春寒(鹿児島県)
「しゅんかん」と読み、中国大陸からまずは京都、そのあと、鹿児島につたわり島津家の殿様料理になったのだとか。イノシシの肉を使った、炊き合わせ料理。
現在は、塩漬けした豚肉を使い、昆布やタケノコ、ごぼう、大根、人参などを薄味で仕上げます。ハレの日の料理としてお正月にも供されます。
サバの昆布巻き(鹿児島県)
出典:365日レシピNo.364「サバの昆布巻き」 : かごっまおごじょ …
「サバを昆布巻き」は、鹿児島以外ではほぼ見ないと言っても良い料理。各家庭で受け継がれてきた味。鹿児島県人はとても愛着が料理だとか。昆布を柔らかく戻してから、生のサバを巻き、クシに刺して煮るという作り方。味は塩気が強いのが定番。
完成までに丸一日かかるおもてなし料理ですが、絶品の味わい!自宅で作るのもそうむつかしくはないので、挑戦してみるのも良いかも知れませんね。
さつま雑煮(鹿児島県)
出典:鹿児島風♪お雑煮
鹿児島県のお雑煮は、干した焼きえびと干し椎茸、昆布を一番水につけて出汁をとります。具は、焼きえびと鶏肉、白菜に干椎茸、里芋などに豆もやし。雑煮に豆もやしを入れて「まめまめしく元気に働けるように」という願いが込めています。しゃきしゃきとした歯ごたえも楽しめる豆もやし。今度のお正月に豆もやしを加えたお雑煮はいかがでしょうか。
ななとこずし (宮崎県)
「ななとこずし」は、1月7日に作る雑炊のこと。「七歳の子供に晴れ着を着せてご近所のおうちを7軒まわって七草雑炊を貰う」という行事があり、その雑炊が「ななとこずし」と呼ばれていました。
野菜は、にんじん・ごばん・みやし・せり・しいたけ・大根。それにお米と丸餅を入れて作ります。現在は、7軒回ることはなくなりましたが、だいじに受け継がれている行事食。
黄飯(大分県)
出典:大分食べ歩き |寿楽庵
「黄飯」は、おうはん、または、きめしと読みます。鮮やかな黄色いは、クチナシの乾燥した実を使って色付けしています。クチナシにはサフランと同じ成分が含まれており、炊きあがった色もそっくり。ですが、サフランのような香りはしないので、クチナシの実は余計な香りを嫌う日本料理にぴったりの材料といえます。
大分県の黄飯は、そのむかし臼杵藩主が、懐の事情によって赤飯が炊けず、代わりに黄飯を振る舞ったことが始まりと言われています。
この黄飯は、大晦日に炊き、かやく、とよばれる白身魚や豆腐、野菜を炒めて煮込んで作った汁物をかけて食べるのが正式な食べ方。
このお汁の方を「きめし」と呼び、黄飯なしで食べることもあるそう。大晦日から正月三が日に煮返しながら食べると、煮返すたびにおいしくなりますね。。この料理は、白身魚がない時は鶏肉や豚肉でも代用できます。一度作ってみてはいかがでしょうか。
九州のお正月料理、いかがでしたでしょうか。作ってみたくなる料理もあったかと思います。自分の郷土のお正月料理をあらためて見直すきっかけになれば幸いです。また、お正月にその地方を訪れる機会があればぜひ地元のお正月料理を食べてみてくださいね!