旅行好きの方は、旅行の下調べが好きな方も多いですよね。旅行中の貴重な時間を無駄にしたくないからと、昼食の場所や買い物が出来るお店など分単位でガッチリと計画を立てる方。
往復の交通手段や宿泊場所だけを決めて、現地では気の向くままに過ごす方。旅行には正解がないからこそ、その人なりの性格が出やすいのかもしれません。
とは言えどんな性格の方でも旅行前は仕事や家庭、準備などで何かと忙しいもの。そこで、特に知識や下調べ不要で石川県で伝統産業の工房見学や体験が出来るスポットをご紹介します。ぜひご参考ください。
加賀友禅
京都の京友禅、東京の江戸友禅とともに三大友禅に数えられ、また国が指定した200を越える伝統的工芸品の内の1つ。
京都で修行し、人気の扇絵師だった宮崎友禅斎が友禅染の創始者と言われます。
出典:KILALA
江戸時代中期に金沢へと移り住み、加賀お国染めを基に加賀友禅の技法を確立。
また加賀藩による庇護や奨励により、加賀友禅は大いに発展しました。
臙脂(えんじ)・黄土・藍・草・古代紫の加賀五彩と呼ばれる、5つの色彩を基調としています。
出典:金沢市観光協会
草花を用いた絵画調の柄や、ぼかし・虫食いの技法が用いられているのも加賀友禅の特徴の1つ。図案の作成から下絵・彩色・地染め・蒸し・水洗いなど、完成までには10近い工程があります。
加賀友禅の工房見学&体験可能な施設
加賀友禅会館
館内では手描友禅の実演コーナーや資料・作品を展示し、加賀友禅について紹介しています。
出典:フォートラベル
加賀友禅を実際に着られる着用体験では、足袋や草履なども用意してもらえるので手ぶらで参加できます。
時間があれば、着用して兼六園やひがし茶屋街などの散策も可能。
出典:トリップアドバイザー
ほかにも手描きや型染めなど、気軽に本格的な加賀友禅の作業体験もできます。
ハンカチやトートバッグなど、自分だけのオリジナルを作ってみませんか?
加賀友禅工房 長町友禅館
出典:Goo ブログ
江戸時代初期に創業した老舗染元が運営。館内では加賀友禅の着物や工芸品の展示、製作工程や加賀友禅の歴史などを映像やパネルで紹介しています。
出典:金沢市観光協会
こちらでは配色をイメージしながらの手描き友禅染の体験や、街着着物の着付け体験を行っています。
九谷焼
起源は1655年頃と言われ、大聖寺藩九谷村(現在の石川県加賀市)で磁器の原料となる良質の陶石が発見されたことがきっかけとなり磁器生産が始まりました。
出典:ソーホー
初代藩主の前田利治が藩士の後藤才次郎に命じて肥前有田で製陶の技能を習得させ、後に殖産政策として窯を興させました。
しかし1701年頃に突然閉窯、その理由は謎のままです。それから約100年経った1800年頃に再興し現在に至ります。
九谷五彩と呼ばれる緑・黄・紫・赤・紺青の5つの色を使って描かれる、豪快でありながら繊細さを持ち合わせる独特の色絵磁器。
石川県内では加賀市・能美市・金沢市・小松市などで生産されていますが、総生産量の約8割は能美市寺井町と言われます。
九谷焼の工房見学&体験可能な施設
能美市九谷焼美術館
出典:全国観るなび
九谷五彩の5つの色に因んで、5つの展示室に江戸後期から明治にかけての名品や巨匠の作品を展示している「五彩館」。
九谷焼作家の浅蔵五十吉氏の作品や展示、九谷焼における功績などを紹介する「浅蔵五十吉記念館」。
出典:石川県観光連盟
職人が実際に行う創作の様子を見学できる「職人工房」や、手びねり・ロクロを使っての作陶体験や湯飲み・皿などに絵付けが出来る「体験館」で構成されています。
どのように九谷焼が作られ、どんな歴史を辿ってきたのかを知ることが出来る施設。
ミュージアムショップでは限定のオリジナルグッズも手に入ります。
九谷陶芸村
実際に手に触れてみたい、お土産に買っていきたいという方にオススメの場所。
ここには九谷焼の製造や卸業を行う10社のショールームがあります。普段使い出来るものから、伝統工芸品まで。
著名作家の作品から、若手まで。さまざまな九谷焼の作品が揃います。
出典:石川サウス
自分のものだけでなく、大切な方へのお土産や贈答品にも喜ばれそう。
能美市九谷焼美術館からも近いので、併せて見学するのがベスト。
九谷セラミック・ラボラトリー
施設内に製土工場があり、陶石から陶土へと完成していく工程を見学できます。
出典:いいじ金沢
ギャラリーには九谷焼が出来上がるまでを紹介する常設の展示や、若手作家の作品の展示。
体験工房ではロクロや手びねり・絵付けの体験があり、ぐい呑みや茶碗・そばちょこなどオリジナルの作品を作ることが出来ます。
出典:あさぴーのおいしい独り言
専門のスタッフが指導してくれるので、初心者でも楽しめます。また1人から参加でき、予約もHPから可能。
金沢和傘
最盛期には金沢市内に118軒の和傘店がありましたが、昭和30年代頃の洋傘の普及に伴いその数は激減。
金沢和傘の伝統を守り、製造しているお店はたった1軒に。
出典:和傘・水引 工房 明兎
かつて金沢周辺では孟宗竹や真竹が群生していたそうで、富山県産の楮から作られた和紙を使った和傘作りが盛んになりました。
雨や雪の多い北陸、特に金沢では湿気を含んだ重い雪も降ることから丈夫な傘に仕上げる必要がありました。
出典:SHOKUNIN
和紙そのものもぶ厚く、傘の先端部分は4枚重ね。手入れをしっかりと行えば、50年は持つと言われるほど強靱な金沢和傘。
傘を開いたときの絵柄の華やかさや、5色の糸を編み込んだ千鳥がけなどの細やかな技が特徴。
金沢和傘の工房見学&体験可能な施設
松田和傘店
1896年に創業し、現在は3代目が伝統を守っています。
出典:中川政七商店の読みもの
本来は数人の職人が分業しますが、30以上の工程を1人で全て行っています。
使用する和紙のバリエーションも豊富で、本物の紅葉や笹を取り入れることも。
出典:Twitter
洋傘には無い手作業ならではの温かみと丈夫さ、そして鮮やかなデザイン。
店内にはカラフルな和傘が吊るされていて、見ているだけで華やかな気分になります。
七尾和ろうそく
七尾での和ろうそくは、1650年頃に「蝋燭座」が作られたことに始まります。座とは、今で言う協同組合のようなもの。
七尾は北前船の寄港地であったため原料が容易に手に入った事や、仏教の普及により仏壇に使う灯りとして和ろうそくが広まっていきました。
しかし電灯の普及により製造販売する店が減り、現在は1軒のみになりました。
和ろうそくの芯は、和紙にい草から採れる灯芯を巻いて作られます。
出典:しゃかいか!
蝋はヤシ油やハゼの実・米ぬかなどを利用する植物性。西洋ろうそくに比べて煤が出にくく、炎が大きく消えにくいのが特徴。
ろうそくの炎には心地よいリズムをもつので、癒し効果も絶大です。
七尾和ろうそくの工房見学&体験可能な施設
高澤ろうそく店
創業1892年で、七尾の和ろうそくを作る唯一のお店。
出典:レトロな建物を訪ねて
蝋や和紙など植物由来の原料を用いて、昔ながらの和ろうそくを製造。
能登の植物をイメージした「和ろうそく ななお」や、四季の花をプリントした絵ろうそく「四季あかり」、市松模様をあしらった「大正浪漫ろうそく」など個性的な和ろうそくがあります。
出典:暮らしのほとり舎
また燭台やろうそく消し・芯切りばさみなどオリジナルのグッズも製作しています。
山中漆器
400年前程から加賀市の山中温泉で作られている漆器で、山中塗とも呼ばれます。
出典:酎ハイとわたし
良い材料を求めて山中温泉へ移り住んできた木地師達が行ったロクロ挽きが始まりで、湯治客向けの土産物として作られていました。
江戸時代半ば頃になると金沢や会津・京都などから学んだ漆塗りの技法を取り入れ、山中漆器の良さが全国へと知られるようになります。
出典:昇龍道
3mmの間に細い線を数十本入れる千筋や、木目の間が透けて見えるほどの「薄挽き」など、職人による高度な技術と木目の自然な模様が組み合わさっています。
現在はライフスタイルの変化や大量生産された安価な商品などにより、生産量が減りつつあります。
しかしいくつもの工程を経て作られた山中漆器に触れると、それらとは全く異なる自然な風合いと温かみに気づかされます。
山中漆器の工房見学&体験可能な施設
山中漆器伝統産業会館 山中うるし座
出典:石川県観光連盟
重要無形文化財「木工芸」の保持者いわゆる人間国宝に1994年認定された川北良造氏の作品をはじめ、文化的価値の高い現代の名工までの作品を展示。
また伝統工芸士によるロクロ技術の実演や、製造工程を映像で紹介もしています。
出典:フォートラベル
もちろん普段使い出来る日用食器やアクセサリーなど40社以上の商品を扱っていて、購入も出来ます。
隣接する山中漆器産業技術センターでは、予約が必要ですが木地挽きロクロ体験や工房の見学ができます。
輪島塗
「輪島の職人により、輪島地の粉を使い、布着せを施し手作業で塗り上げた塗り物」の総称。地の粉とは輪島市内で採取された珪藻土を焼成して粉末状にしたもので、漆に混ぜて使います。
出典:中川政七商店の読みもの
布着せとは木地の薄い部分に布を貼って補強することで、輪島塗の堅牢さはこの作業があるからこそ。
木地には、主にアスナロやケヤキなどが用いられます。完成までには124もの工程があり、塗りの作業だけでも36回。
また金粉や銀粉・金箔などを使用する沈金・蒔絵などの作業が加わることで、より優美な輪島塗が生まれます。
値段が高いと言うイメージがありますが、お椀1つ仕上げるのに1年を要することもある輪島塗。
その値段には数々の工程や年月、そして職人の技も含まれています。
しかし丈夫な輪島塗は上手に使えば長く使うことが出来るので、一生ものとしてぜひ購入してみてはいかがでしょうか?
輪島塗の工房見学&体験可能な施設
しおやす漆器工房
1858年に、初代塩安忠左衛門が輪島塗の塗師として独立したことに始まります。
出典:フォートラベル
輪島塗の製造工程は、大きく分けると「木地」「塗り」「加飾」という作業があります。
しおやす漆器工房は塗りを専門とし、製品の販売も手掛ける塗師屋(ぬしや)。
店舗には展示フロアが設けられ、ゆっくり店内を見て廻ることが出来るようになっています。
出典:石川県観光連盟
工房では常時10人ほどの職人さんが、主に下地から上塗りまでの作業にあたっています。
希望すれば説明もしてくれます。店舗での買い物と併せて、ぜひ工房も見学していきましょう。
石川県輪島漆芸美術館
1991年に開館した、常時全室で漆芸品を展示する世界で唯一の漆芸専門美術館。
出典:ロータスタウン
季節ごとに展示会やイベントも開催。輪島塗の製作工程や、著名な漆芸作家の作品など映像でも紹介しています。
こちらで行われている体験や、沈金のスプーンと箸の色付と蒔絵のストラップ作り。
出典:輪島女子旅
沈金は予め文様が彫られたものに7色の金属粉で色付、ストラップは拭き漆を施した木片にスタンプを押し、同じく7色の金属粉で色付していきます。
漆は合成塗料の代用漆なので、手がかぶれる心配はありません。
シーズンや曜日により料金が異なりますが、沈金スプーンは¥1700~、箸は¥1500~、ストラップは¥700~。予約はHPから可能です。
旅行前に下調べをしなくても、現地で気になったお土産の歴史や製造工程などは現地で知ることも出来ます。
「これいいな」と思うお土産が見つかったら、体験可能であればまずは参加してみましょう。
世界に1つだけの、オリジナルのお土産を手に入れることが出来るはずです。
※工房の見学や体験には事前に予約が必要な場合があります。お出かけ前に各施設へご確認ください。
※営業時間や定休日・料金などは、各施設のHP等で最新情報をご確認ください。