寒ブリに白えび、ホタルイカ。最近では富山ブラックと呼ばれるラーメンも人気。富山県は、海の幸をはじめ美味しいグルメの宝庫。総務省統計局の調査によると、一世帯あたりの昆布の年間購入金額は富山市がダントツ1位とか。
旅行の際には、そういった地元グルメを食べるのも楽しみの1つですよね。しかし、まだ何か忘れていませんか?
そうです!富山県が誇る郷土料理『ます寿し』があります。「あ~、駅弁の!」と思った方も多いでしょう。しかしいろんなメーカーが独自の『ます寿し』を製造販売しており、味は決して同じではありません。それぞれに歴史と伝統があり、こだわりも。
富山県民以外には馴染みが薄いかもしれませんが、一度食べるとハマる人続出の『ます寿し』。『ます寿し』とはなにか、さらには富山の郷土料理『ます寿し』の名店を厳選してご紹介させていただきます。
まず始めに
出典:食雑写記
店名・商品名が「鱒寿司」「ますのすし」「ますの寿し」「ます寿司」など店舗ごとに表記が異なり、どれが正しいという定義は無いようです。
出典:かんちゃんののんびり日記
富山市には富山ます寿し協同組合と言う団体がありますので、本文中では店名・商品名を除き『ます寿し』と統一して表記しております。
『ます寿し』ってどんな食べ物?
『ます寿し』の歴史
出典:グッドクロス
丸い器に笹を敷き、その上に塩漬け・味付けした鱒の切り身と酢飯を乗せて作る押し寿司。富山県推奨とやまブランドの認定品にもなっている、富山県の郷土料理の1つ。『ます寿し』が富山県で作られるようになったのには諸説あります。
出典:ミヤモト家具
1717年に富山藩士吉村新八が、神通川で獲れた鮎を使って作った「鮎ずし」を三代藩主前田利興に献上。後に、神通川のサクラマスを使用した『ます寿し』も作られるようになりました。
また神通川中流にある鵜坂神社にはその年に最初に獲れた鮎をお供えする風習があり、鱒だけの献上から炊いたご飯の上に鱒を乗せたものに変化していき、それが現在の『ます寿し』の原型になったとも言われます。8代将軍の徳川吉宗公に献上した際には、あまりの美味しさに感嘆の声を上げたそう。
『ます寿し』はどうやって作る?
鱒はサクラマスで、本来は神通川で獲れたものを使用していました。しかし年々漁獲量が落ち、最盛期の明治時代には年間160トンだったものが、2006年にはわずか0.5トンに。
出典:吉田屋鱒寿し本舗
今となっては、神通川のサクラマスは幻と呼ばれるほどになりました。そのため県外産を含む国産の天然サクラマスで作られる『ます寿し』は貴重で、ぜひ味わっておきたいところ。
購入の際には、原材料の表示を店舗の公式HP等で必ず確認しましょう。
出典:ameblo.jp
『ます寿し』に欠かせない笹には、香りと抗菌作用。容器の曲げ物は薬を持ち運ぶための小さな桶のような形が、密封性が高く清潔に扱えることからヒントになって作られたと言われます。
最近では容器が丸型以外のタイプも増え、バリエーションが豊富になりました。店舗によって多少異なりますが酢飯は一段なら一合ほどの量があり、製造から梱包まで全て手作業のお店も。
出典:越中とやま食の王国
富山市内を中心に、『ます寿し』を製造販売しているお店が30とも50とも言われ、それぞれに個性があります。しっかりと酢が利いているものや、熟成し脂が乗っている鱒を使うもの、全体的にあっさりとしているものなど。
出典:酢飯屋
昭和に入ると家庭でも作られることが増え、富山県の郷土料理として広まるようになりました。
とは言え、やはり専門店の味には専門店ならではの知恵がふんだんに盛り込まれています。富山市民は皆お気に入りのお店を持っているそうで、家族でも好みが分かれることもあり、いくつかのお店のものを食卓に並べることも珍しくはありません。
『ます寿し』が全国区になったきっかけ
今でこそインターネットで簡単にお取り寄せができる時代ですが、『ます寿し』の名が全国に知られるようになったのは駅弁からと言われます。富山市内に鉄道が開通した1908年に、国鉄富山駅で駅弁販売事業をスタートさせたのが「ますのすし本舗 源」。
出典:ぼちぼち歩く
1912年から「ますのすし」の販売が始まりました。当時は1つ45銭で、今の価値で¥1350~1800くらいになるそう。
現在は一段¥1600程度なのでそれほど変わりませんが、当時の感覚としては高かったのではないでしょうか。
駅弁としては、北陸新幹線の富山駅・新高岡駅・車内販売でも扱われています。
『ます寿し』を食べ比べるなら!
越中鱒寿し 富乃恵
富山県を訪れることがあれば、やはり本場の味を確かめて欲しい!
出典:みんカラ
そこでオススメしたいのが2015年3月14日の北陸新幹線開業に合わせてオープンした、富山駅直結の「とやマルシェ」内の「越中鱒寿し 富乃恵」。
富山市内にある10軒ほどの専門店の『ます寿し』を販売。食べ比べたいけど1軒ずつ廻る時間がない方にピッタリ。
出典:nobujism
酢飯の酸味や押し具合、使用する鱒のレア度が各店の商品ごとにグラフ化されています。これを見れば、自分の好きなタイプが一目瞭然。
どれを買おうか迷ったときに参考になります。また通常サイズの半分ほどの「はんぶんこ」も。
出典:化石部の父
1984年からは、富山空港の「まいどは屋」で空弁としても販売しています。
ぐるっとグルメぐりクーポン
出典:VISIT富山県
富山県内で宿泊して行程上時間に余裕があれば、「ぐるっとグルメぐりクーポン」を利用してみるのも1つの方法。
富山地方鉄道の市内電車と富山港線1日乗り放題券と、富山名物&ます寿しクーポンがセットになったきっぷ。
『ます寿し』は7店舗、富山名物は10店舗の中から好きなお店を選べます。
出典:バス比較なび
交換できるクーポン2枚付きは¥1000、5枚付きなら¥1500なので、5枚付きが断然お得!
『ます寿し』はこのクーポン限定で1枚1/8切れサイズと交換なので、ちょっとずつ試すことが出来ます。
詳細は、富山地方鉄道のHPでご確認ください。
電話番号:076-432-3456(富山地鉄テレホンセンター 平日のみ8:30~17:30)
『ます寿し』についてもっと知りたい!
出典:老猫街ある記・食べある記
お店によって作り方はもちろん、歴史や原材料の選び方などがそれぞれ異なります。
どのように『ます寿し』が作られているのか気になりませんか?そんな方は「ますのすし本舗 源」にあるますのすしミュージアムへ行ってみましょう。
出典:富山の遊び場!
1日で出荷する分の商品が全て作られる工場に併設されていて、製造工程を見学できるようになっています。
また全国から集められた駅弁のかけ紙で日本地図を表した壁面や、昔の弁当容器など珍しいコレクションの展示。
出典:goo blog
ますのすしやミュージアムについて映像で紹介するモニター、富山県の名産品を集めたショップ、できたてのますのすしが味わえる食事処などがあります。
また1週間前までの予約制ですが、職人さんが教えてくれるますのすしの手づくり体験もできます。
住所:富山市南央町37-6
電話番号:076-429-7400
営業時間:10:00~15:00(※当面の間)
駅弁販売店(JR富山駅構内中央改札前売店)
住所:富山市明輪町1-225
電話番号:076-431-2104
営業時間:7:00~21:00
『ます寿し』のオススメ店
富山ます寿し協同組合に加盟する店舗は、富山市内に13軒あります。その中から、特に人気の高い5軒をご紹介します。
青山総本舗
鱒は北海道産の天然のサクラマスと輸入養殖サーモンを、商品によって使い分けています。
出典:やすブロ
天然ものを食べたいなら、特選を選びましょう。杉板の曲げ物に京都村山醸酢の千鳥酢、新潟県産のクマザサ・井波地方で作られた特別栽培米のコシヒカリなど素材を厳選。
特選は一段¥2800からあり、8等分してそれぞれを笹で包んだ銘々包みも一段¥3100からあります。
出典:青山総本舗
銘々包みはカットする必要が無いので食べやすく、大切な人への手土産にも喜ばれます。
特選商品は数量限定なので、事前に予約しておいた方がいいでしょう。
吉田屋鱒寿し本舗
出典:食べログ
契約農家から直接仕入れる富山県産コシヒカリや、長野県産天然クマザサなど最高のます寿しを作るべく素材を厳選。
こちらではおぼろ昆布や梅しそなどを使用した、他店では見ないようなちょっと変わったタイプも販売。
出典:食べログ
さらに、酢飯を鱒で上下にサンドした両面という贅沢な商品も。もちろんスタンダードなタイプもあり、一重¥1600から。
全ての工程を手作業で行っています。いつもと違うます寿しを食べたくなったら、ぜひこちらのお店へ!
元祖せきの屋
出典:食べログ
創業1878年と、『ます寿し』の製造販売を行うお店の中でもかなりの老舗。
吟味した素材と確かな味、そしてその味に惚れ込んだリピーターから絶大な支持を受けています。
出典:いいまち富山
ふっくらと炊き上げたお米はほどよい酸味、少しあっさり目の鱒と適度な押し具合。これぞ富山の『ます寿し』と言った安心の味。
一重¥1600、二重¥3000のほか、ミニます¥540という小さめのものも。
通常のサイズだと食べきれないという方や、子供なども食べやすい大きさです。
高芳
契約した農家から直接仕入れる富山県産コシヒカリに国産の笹の葉、そして北海道産のサクラマスを使用。全て手作りで行うため限定生産になります。1日に提供できる『ます寿し』には数に限りがあるので、どうしても手に入れたい方は必ず予約を!
出典:食べログ
また定休日が日曜日(不定休)のため、週末の旅行の際には注意が必要です。一重¥1600、二重は¥3000。
さらに、特選の「芳太郎」は予約販売のみで¥2400。通常のものより鱒の身が厚めなので、食べ応えがあります。
川上鱒寿し店
1923年創業の老舗鱒寿し店で、富山城址公園近くにあります。特製の甘酢に漬け込んだ肉厚半レアな鱒と、富山県産のお米は甘みが強くほどよい弾力。押し具合はしっかりしていて、ジューシーな鱒との一体感が絶妙。専門店の老舗だけあって、正統派なます寿しの味わいが楽しめます。
出典:食べログ
一段¥1600、二段¥3100のほか、食べやすいはんぶんこ¥910も。
丸の内本店のほか、とやマルシェや富山空港でも購入できます。
こちらは朝6:30から営業しているので、早い時間に富山に到着・出発する際の朝食に便利です。
主な原材料は富山米と鱒と酢、実にシンプル。そして爽やかな香りと抗菌作用を持つ笹、独特の丸い器。
長い歴史に裏付けされた、地元に愛され育てられた唯一無二の味。
あっさり、熟成、ジューシー、しっとり。いろんな表現を用いても足りないくらい、奥が深い『ます寿し』。
数あるメーカーの中から自分好みを探すのは至難の業ですが、次の富山旅行はお気に入りの『ます寿し』の味を探しに食べ比べにチャレンジしてみませんか?
※営業時間や定休日・料金などは、公式HP等で最新の情報をご確認ください。
※早い時間に売り切れることがあるため、お出かけ前に予約をオススメします。