平家の落人が隠れ住んだと言われ、深い山間にひっそりと佇む合掌造りの集落。しかし合掌造りと聞くと、「白川郷」を先に思い浮かべる方も多いはず。
1つの場所にたくさんの合掌造りが集まる「白川郷」に比べると、五箇山合掌造り集落は見どころが少ないと思っていませんか?昔ながらの姿を留める五箇山合掌造り集落は、素朴でどこか懐かしさを覚える風景が魅力。1度訪れれば、まるで自分のふるさとができたように感じることでしょう。「白川郷」にも負けない、五箇山の魅力がたっぷり。今回はそんな五箇山合掌造り集落の見どころを厳選してご紹介します。
五箇山合掌造り集落とは?
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岐阜県白川郷の荻町集落と、富山県の五箇山と呼ばれる地域の相倉集落・菅沼集落の3ヶ所が「「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として、1995年に世界文化遺産に登録されました。
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この登録されたことをきっかけに知ったと言う方もいると思いますが、それよりも前の1970年に国指定の史跡に、1994年には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
五箇山とは町名ではなく、40ある小さな集落の総称です。今もなお日々の暮らしが営まれている合掌造りの建物は、山間に静かに佇みながら歴史を物語っています。
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その景色は、世界の誰もが魅了されるまさに日本の原風景。「心のふるさと」とも言える五箇山の合掌造り集落で、ゆっくりと散策をお楽しみください。
五箇山合掌造り集落へのアクセス
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1ヶ所に全てが集まっている訳ではないので、どういった手段で訪れるかによって散策の仕方も変わります。自家用車または主要な駅などからレンタカーを借りれば、動きやすく且つ広範囲の移動も楽々。主な2つの集落は離れているので、やはり車があると便利です。
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バスを利用するようであれば、加越能バスの「世界遺産バス」がJR高岡・城端駅前から相倉・菅沼まで運行しています。バスなので当然時間が決められてしまいますが、うまく調整すれば相倉集落・菅沼集落のどちらへも行くことも可能です。
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最終的に白川郷へも行くバスなので、3ヶ所の合掌造り集落を見たい場合にもオススメです。片道・周遊などの『フリーきっぷ乗車券』を使えば、お得に利用できます。(※詳細は加越能バスのHPでご確認ください)
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同じような合掌造りに見えても、実は五箇山と白川郷では異なる点も多いそうです。土間の取り方の違いや玄関が妻(正面)に造られていること、屋根の傾斜が急であることなど。せっかくなら白川郷も併せて見学して、その違いを確かめてみませんか?
五箇山の合掌造り集落を知ろう!
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赤尾谷・上梨谷・下梨谷・小谷・利賀谷の5つの谷間(やま)で構成された集落の総称だと伝えられる五箇山。
冬には2m近くも雪が積もる豪雪地帯です。このあたりでは湿気を多く含んだ重たい雪が降るため、急な傾斜を付けた屋根が雪を落としやすくしています。
出典:世界遺産 五箇山菅沼合掌造り集落
世界文化遺産に登録されている2つの集落の主な見どころを中心にご紹介します。のどかに広がる里山をのんびりと歩きながら、美しい景色を楽しんでください。
相倉集落
現在合掌造りの建物は23棟あり、そのほとんどは江戸末期から明治時代に建てられたものです。
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建物の周囲には小川が流れ、石垣・雪持林などが風景に彩を添えています。雪持林とは、雪崩から集落を守る役割を果たす森のこと。
相倉民俗館
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旧尾崎家の住宅を利用し、江戸時代の生活用具など展示する資料館。屋根裏は、骨組みや内部構造が間近に見られる構造になっています。
相倉伝統産業館
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旧中谷家の建物で、主産業であった塩硝や養蚕・和紙作りなどの道具類を展示しています。五箇山民謡の映像も見ることができます。
展示館 勇助
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主に養蚕を営んでいた建物で、現在は民宿として宿泊も可能。内部にはさまざまな写真を展示し、相倉集落の今と昔の姿を見比べることができます。
原始合掌造り
出典:請来軒
現存する合掌造りの原型とも言われるもので、茅葺屋根がそのまま地面に接しています。旧岩本家で、現在は物置小屋として利用されているとか。
1970年に国指定史跡となった際の記念碑が近くにあります。
五箇山和紙漉き体験館
出典:旅亭 みや川
富山市の八尾和紙・朝日町の蛭谷紙とともに越中和紙と呼ばれる五箇山和紙。国の伝統工芸品にも指定され、保存性や耐久性に優れています。
予約なしでも体験可能ですので、五箇山を訪れた記念にぜひどうぞ。
天狗のあしあと
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長ヨ門という民宿のそばにある大きな岩に、足跡のような窪みがあります。これは天狗が付けた足跡だと伝わっているそうです。
ライトアップ
2019年度は4月27~29日、8月12~14日、9月14~16日、11月25・24日にライトアップが予定されています。
出典:はてなダイアリー
時間は、日没から21:00まで。相倉集落には合掌造りの民宿が6軒ありますので、ぜひ宿泊してライトアップをお楽しみください。
菅沼集落
五箇山では相倉集落とともに有名ですが、合掌造りが9棟と小さくのどかな場所。歴史を今に伝える建物と周囲に広がる風景が1つになると、そこは昔話や絵本のような世界。
出典:ハスラーで車中泊はじめました
2月上旬と3月の毎週金・土曜日、5月下旬~6月上旬には50基の照明でライトアップされ、幻想的な景色が楽しめます。
五箇山民俗館
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深い山間にある五箇山での暮らしぶりがわかる、生活用具や資料など約230点を展示。
1階には塩硝製造に関連する道具類や食器・衣類など、2階には養蚕の用具などを見ることが出来ます。
塩硝の館
出典:茶道家よくせんの日本旅行・寺社巡りのブログ
古くから五箇山で行われてきた塩硝作り。加賀藩政時代には、300年にわたって守り続けてきた五箇山の一大産業です。
材料の採取方法や作り方、出荷までと一連の過程を紹介しています。
籠の渡し
出典:明日出来ることは、今日しない
五箇山は流刑地だったため橋を架けることが許されず、ぶどうの蔓で作った大綱を張って取り付けた籠に乗って対岸へ渡るしかありませんでした。
昔は五箇山だけでも13ヶ所もあったそうです。五箇山民俗館にも展示してありますので、恐怖を感じながら籠に乗って移動した当時の人へ思いを馳せてみましょう。
相倉集落・菅沼集落以外の見どころ
岩瀬家
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菅沼集落から少し離れた西赤尾という地域にあります。五箇山でも最大規模となる5階建ての合掌造り。内部は総欅造りとなっていて、家長の間や仏間・書院の間などがあります。
3階から5階までは養蚕を行う作業場になっています。囲炉裏端で、当主から五箇山での暮らしについて話を伺うことが出来ます。
行徳寺
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岩瀬家の隣にあり、五箇山に浄土真宗を広めた赤尾道宗が開祖。室町時代末期に建てられたもので、茅葺きの鐘楼門と庫裏は南砺市の有形文化財に指定されています。
道宗遺徳館を併設していて、版画家・棟方志功の作品を含む寺宝の所蔵と展示を行っています。
村上家
出典:フォートラベル
350年ほど前の建てられたもので、1958年には国の重要文化財に指定されています。建物内には、民俗資料や生活用品が展示されています。
外観だけでなくぜひ内部も見学していきましょう。庭に樹齢300年と推定される雪椿があり、五箇山絞りと名付けられています。
白山宮
出典:Gooブログ
1502年に創建され、富山県最古の木造建築。御祭神は白山菊理媛命(はくさんきくりひめのみこと)。
古くから神仏習合の形態が残されているため十一面観音菩薩が本尊として祀られていて、33年ごとに御開帳されます。(次回は2019年5月11・12日予定)
国の重要文化財である白山宮本殿を覆い保護する役割をする「白山宮鞘堂」は、2018年5月10日に国の有形文化財に登録されました。
羽馬家
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田向集落にある国の重要文化財に指定されている合掌造り。江戸時代中期以前に建てられたものとみられ、見学は外観のみ。
合掌造りとしては小規模ですが、古くから伝わる建築様式は合掌造りの歴史を知る貴重な存在。2018年10月には、22年ぶりに茅の葺き替え作業が行われました。
流刑小屋
出典:くろかわ理事長ぶらぶらブログ
五箇山は加賀藩の流刑地であったため、罪人用の流刑小屋が造られました。
集落内のみ出歩くことが出来る平小屋、一歩も外へ出かけることが許されないお縮(しまり)小屋、小屋の内部に造られた更に狭い檻の中へ閉じ込める禁錮と3種類あったそうです。
田向集落に残されているのはお縮小屋で、1963年に大雪で倒壊後に古文書を参考にして復元されました。茅葺き屋根のその姿は合掌造りそのままですが、あまりの小ささに驚きます。
五箇山の合掌造り集落での楽しみ方
宿泊してみる
出典:フォートラベル
合掌造り集落内や周辺には、宿泊できる施設がいくつかあります。せっかくなら、合掌造りの宿に泊まってみませんか?
出典:遠くへ行きたい(20代OLの旅日記)
相倉集落には6軒、上梨集落に2軒に民宿があります。しかしながら、1日あたりの宿泊可能人数が少ないため、希望日に予約が取りにくいシーズンも。
出典:御経塚通信
菅沼集落から少し離れた場所にある「合掌の里」には移築された合掌造りの建物があり、コテージタイプの宿。こちらならグループでの利用も可能。
気の合う仲間とバーベキューをして、賑やかに過ごしたい方にオススメです。
出典:Yahoo!ブログ
もっと気軽に楽しみたいならキャンプ場、温泉を楽しめる旅館もあるので自分に合った宿を探してみてください。
体験してみる
出典:ameblo.jp
五箇山の合掌造り集落では、見るだけではなく体験も可能。古くから謡い継がれている民謡を鑑賞したり、「こきりこ踊り」にも用いられるささら編みを作ったり。
五箇山ならではの体験ができます。なかでもオススメしたいのが、八尾和紙・蛭谷和紙とともに『越中和紙』として国の伝統的工芸品にもなっている五箇山和紙の体験。
出典:うるわし
加賀藩の手厚い保護を受けたことから大いに栄えていた五箇山和紙は、丈夫なのに柔らかいのが特徴。
紙漉きや、はがき・うちわ作りの体験が出来ます。相倉集落の五箇山和紙漉き体験館のほか、下梨集落の(農)五箇山和紙・道の駅たいら五箇山和紙の里で行っています。
ただし予約の有無や体験内容がそれぞれ異なるので、お出かけ前に各施設へご確認ください。
味わってみる
出典:フォートラベル
五箇山には、ここでしか味わえないグルメがあります。大豆本来の旨みがしっかり感じられる五箇山豆腐。水分が少ないため、縄で縛れるほどで堅い豆腐。
出典:My Social Mate
そして清らかな五箇山の清流で育ったイワナや、栃の実を使って作られる栃餅。特産のカブを使った赤カブ漬け。山の幸・山菜は、手打ちそばと供に。
出典:livedoor Blog
美味しい五箇山の水で淹れたコーヒーや、疲れた体に嬉しいスイーツ。散策の途中での休憩やランチに、ぜひ味わってみてください。
長く厳しい冬が終わると、ようやく遅い春が訪れる五箇山。山々が緑に覆われる夏に、真っ赤に燃える紅葉が楽しめる秋も捨てがたい。
どの季節、どの時間帯でもまるで一枚の風景画のような世界が広がる五箇山合掌造り集落。訪れた人だけが眺められるその景色、見てみたいと思いませんか?
心が動いたら、行き時です!次の旅の計画に、ぜひ五箇山合掌造り集落を加えてみませんか?
※合掌造りには実際に生活をしている方がいるので、私有地に無断で立ち入らないようにしてください。
※営業時間や休館日・料金などは、お出かけ前に各施設へご確認ください。