富山県の西部に位置する南砺市。その中の小さな町、井波という場所は日本一の木彫りの町。瑞泉寺の門前町として発展し、彫刻工房も建ち並んでいます。
また町中のあちこちに井波彫刻があり、探しながら歩いてみるのも楽しみ方の1つ。でも、井波彫刻がここまで発展を遂げた理由は何なのでしょうか?その答えを見つけに、ぜひ井波へでかけてみませんか?日本一の木彫りの町”富山県井波”を楽しむ観光スポットをいくつかピックアップしましたので、ぜひ参考にしてみてください。
井波はなぜ木彫りの町に?
瑞泉寺の再建にあたり、京都・本願寺の御用彫刻士である前川三四郎が井波へと派遣されました。その際に井波の大工4名に、彫刻の技を伝えたことが井波彫刻の始まりと言われます。また、上質な木材が手に入りやすかったという地理的要因も。
わずか4名から始まった井波の彫刻ですが、現在では200人ほどにまで増えています。2018年5月には『宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波』として日本遺産に認定され、まさに日本の宝とも言える井波の彫刻。
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町中には、その美しい彫刻や木彫りの作品が溢れています。
井波の町歩きのヒント
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それほど広い町ではないので、お散歩がてらぶらっと歩くのが最適。マイカーやレンタカーで訪れたなら、井波のメインストリートである八日町通りの入口にある「交通広場」の駐車場へ。
更に広範囲に歩きたい方は、瑞泉寺から徒歩10分ほどの「道の駅井波木彫りの里創遊館」が便利。200点以上の作品を展示する井波彫刻総合会館も併設しています。散策の時間や目的に合わせて利用してください。
石畳の八日町通りを歩けば、左右には木彫りのお店やお土産に便利な菓子店、ギャラリーを兼ねたカフェなどが並んでいます。ランチに便利な蕎麦懐石のお店や老舗の酒造などもあるので、1日のんびりと散策が楽しめます。
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一本路地に入った浄蓮寺境内には、松尾芭蕉の門弟だった瑞泉寺の11代浪化上人が建てた翁塚や、俳人数百名によって寄進された黒髪庵も。
八日町通りの突き当りには井波別院瑞泉寺。井波の見どころが、ギュッと詰まっているエリアです。
井波を訪れたら、まずここへ!
真宗大谷派井波別院瑞泉寺
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1390年に本願寺5代綽如(しゃくにょ)上人によって開山された、井波の町のシンボル。現在の本堂は1885年に再建された単相入母屋造りの木造建築。
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北陸では最大規模の大伽藍です。井波大工や彫刻士が中心となって造られ、堂内にご本尊の阿弥陀如来を安置しています。
また、1806年に完成した総檜の重層入母屋造りの山門、7年がかりの大工事の末に1918年に建てられた太子堂、北陸随一の規模を誇る鐘楼堂などがあります。
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本堂・大師堂・山門・鐘楼堂は井波大工の技を集めた傑作として名高く、見事なまでの彫刻が随所に見られます。
本堂の「隅竜」や太子堂の「手挟み」「獏木鼻」、そして式台門の「獅子の子落とし」など井波彫刻の粋が集結。目線をフルに動かして、見逃さないように。
その1つ1つが非常に細やかで、丁寧な仕事ぶりに驚かされます。とにかくここでは時間をたっぷり取って、先人達が残してくれた貴重な彫刻をじっくりと観察しましょう。
山門
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本堂
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大子堂
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鐘楼堂
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式台門
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春にはこんなに美しい藤の花も!
瑞泉寺以外にも立ち寄りたいスポット
井波八幡宮
1393年の創建と伝えられ、石清水八幡宮の分霊を勧請したのが始まり。ご祭神は応神天皇・神功皇后・仲哀天皇の三柱。井波城跡の一部にあり、神社があるのは本丸跡。
社殿は井波の宮大工によって造られ、随所に美しい彫刻が施されています。境内には蚕を供養するために1861年に建てられた蚕堂があり、市の有形文化財に登録されています。
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毎年春に「よいやさ祭り」というお祭りが行われます。1833年から始まり、商売繁盛や家内安全を祈願する神事。大神輿とこども神輿の計6基の神輿が、1日かけて獅子舞や屋台と共に町内を巡行します。ちなみに2018年5月から宮司を務めているのが、トナミ運輸の社長さんだそう。
井波美術館
八日町通りの中で、ひときわ目立つ石積み風の外観。1924年に建てられ、北陸銀行井波支店として使用されていました。これを旧井波町が寄贈を受け、1987年に美術館としてオープン。
井波で創作活動を行う作家約40名の作品を中心として、彫刻や版画・書などを常設・企画展などで間近で見ることができます。しかも入館は無料なので、散策途中に気軽に立ち寄ってみて。
残念ながら2019年末をもって閉館が予定されているので、気になる方はそれまでにぜひ訪ねてみてください。
池波正太郎ふれあい館
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町歩きの観光拠点になる「よいとこ井波」に併設され、池波正太郎ゆかりの品を展示する施設としては東京都台東区・長野県上田市に次いで3館目。
父方の先祖が井波で宮大工をしていたことで、度々訪れていたそうです。鬼平犯科帳や剣客商売などの時代小説を執筆し、実際に読んだことがなくてもテレビドラマで知ったと言う方も多いでしょう。
出典:とやまブランド
館内には、1階と2階に展示スペースがあります。帽子や着物など実際に身につけていた物や、井波の人達との交流の様子がわかる手紙やハガキ・自筆の原稿や色紙など貴重な物がたくさんあります。
決して大きな施設ではありませんが、展示内容はかなり充実しています。入場も無料なので、ぜひ寄っていきましょう。
秋のお出かけにピッタリのイベント
出典:南砺市
11月25日(日)には、JAとなみ野井波中央支店を会場に「ぐるめフェスタinいなみ&山野のさといもDAY」というイベントが予定されています。
山野地区は里芋の産地で、イベントでは『全日本芋洗いコンテスト』なるものが行われます。木製の樽に水と里芋が入れられ、思い思いの扮装をした参加者がカイと呼ばれる木製器具でかき回して仕上がりを競います。
出典:南砺市
ほかにも里芋の詰め放題や、地元の新野菜に井波産コシヒカリなどの展示即売なども。もちろん美味しい里芋料理に舌鼓を打つこともできます。
イベントは9:00~16:00ですが、早い時間には売り切れることもあるのでお出かけはお早めに!
ぐるめフェスタinいなみ&山野のさといもDAY
会場:JAとなみ野井波中央支店
電話番号:0763-82-1551
ちょっと足を延ばして、ここも見ておきたい!
井波物産展示館 《瑞泉寺から車で約5分》
出典:ameblo.jp
小矢部市の石動駅と、現在の砺波市庄川町駅を結んでいた加越能鉄道加越線。1972年に鉄道が廃止になりましたが、その当時の歴史を今に残す井波駅舎。
沿線の駅としては唯一現存する駅舎で、1977年から井波物産展示館として利用されています。建物は井波の宮大工・松井角平恒茂により、1934年に建てられました。
出典:ウェブリブログ
正面と背面に千鳥破風の屋根を重ねた入母屋造りになっていて、高欄を巡らせた宝玉(ほうぎょく)造りの楼閣を乗せているのが特徴です。
1996年に国の有形文化財に登録され、待合室や駅の看板などが残り、当時を偲ぶことができます。
閑乗寺公園 《瑞泉寺から車で約5分》
1972年に開園した、標高300mの高台に造られた閑乗寺公園。平安時代末期に天台宗の止観寺の末寺として開かれた寺の名前が、地名として残りました。
園内にはオートキャンプ場や遊具もあり、家族で楽しく過ごせる場所。中でも展望広場からの眺めが素晴らしく、美しい散居村の様子が一望できます。
出典:ファミリーキャンプで
「カイニョ」と呼ばれる屋敷林に囲まれた住宅が点在し、その周囲に田んぼが広がっています。庄川と小矢部川が形成した扇状地に、約7000戸の住宅があると言われます。
日中はもちろんですが、田んぼに水の張られた頃の夕景の美しさには感激させられます。
城端曳山会館 《瑞泉寺から車で約15分》
毎年5月4・5日に行われる城端神明宮の例祭「城端曳山祭」。1981年に富山県無形民俗文化財、2002年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。
また2016年には、全国33件の山・鉾・屋台行事の1つとしてユネスコの無形文化遺産にも登録。
館内には加賀藩の保護を受けた大工の手により細部まで精巧に造られた傘鉾、京都・祇園の一力茶屋を模した庵屋台などを展示しています。
曳山祭の様子は映像を通して見ることができ、館内の照明が数分ごとに切り替わることで祭りの夜を疑似体験できます。
今や、工場での流れ作業や機械に頼ることも多い現代の産業。そんな中でも、職人による高度な技術で人々を魅了する井波彫刻。
作品にもよりますが、仕上げるまでにノミや彫刻刀を200本以上使用することもあるそうです。瑞泉寺を始め、井波の町中では先人や現代の名工達の作品にたくさん出会えます。
※営業時間や定休日・料金など、お出かけ前に各施設へご確認ください。